19   水芭蕉
 
 
 
 
水芭蕉と 聞きつけて (きみが)
「ミズバショウの花 が 咲いて いる」
と 耳の基底部で メロディが流れはじめれば
日本の土地の湿潤に ずいぶんと 頭脳をやられた証拠だ
土星以遠から 吹いてくる風へ
身を任してみれば どうだ。(危険なことだ、・ ・ ・ ・ ・ ・ )
 
水芭蕉とは
冥王星の沼地に 棲息している
芭蕉が変態した 水棲怪物の呼称 である。
姿カタチは 宗匠のころと さほど変わらぬが
首筋には ハッキリと けだものの呼吸器がある。
腹がへっているのか 目玉はギョロリ
鳴き聲はスルドク一突き Never more!
 
水芭蕉は
おのれが芭蕉であった時を 恋こがれるのか?
エサの代わりに 句を呉れてやる。
『古池や蛙飛こむ水のをと』 Never more!
『蛸壺やはかなき夢を夏の月』 Never more!
『おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉』 Never more!
『鶴鳴や其声芭蕉やれぬべし』 Never more!
 
矢張り 俳句なんて喰えないモノより
水芭蕉は エサの地球人の片腕が好いらしい。
もとより 俳人とは
《人ニ非ザル人》なのだから 妖怪変化までは一本道
なのではあったが、冥王星までの陸路は まだない。
特に 彼の地 日本からでは。
 
日本人として 恥ずかしくないように
水芭蕉の鳴き聲のレッスンを しましょう。
アメリカのゴシックの鴉の声
との 差異が 非常に むずかしくなってきている。
水芭蕉の場合は 納豆の糸のように 母音を引きのばしてごらん。
ほら、ねばぁぁー、もぁぁー、ねばぁぁー、もぁぁー。
獣に似た笑顔で Please after me .
おもしろうて やがて かなしき水芭蕉。
 
私は 日本の大地で
1999年 日本語を 紙に書くもの。
さる意味で 全くの外部侵入者よりも
恐ろしい 水芭蕉が 冥王星から
詩の死を 従者に 銀河ヒッチハイクしてきても
なんの不思議も ありはしない。
その日のために 自分の利き腕が供物になるように
私は 今日も必死に 日本語の納豆をごねる。
レッスンだ、レッスンだ。
不可視惑星を 見返えすための。
 



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