9   猫/写
 
 
 
 
小説のキモは、描写でありまする、と
したり顔で、マニュアル本にしたためれば、
3000部はペイする、安易な世界。
 
ほんとうに、そうなのか。
小説化志望のぼくは、いぶかしがり
売れない 純文学の分厚い文芸誌を
買ってきて、ぱらぱらとページを繰って
目も 眩む。
 
400ページある文芸誌に
軟着陸している小説の数々の
15ページほど では
(かなりの パーセンテージだ。)
樹々が 揺れている。
そんなふうな 描写が
なぜだか   横行しているのだ。
 
明治爾来、
主人公の内面を 示すため(だけ)に
わざわざ 小説家は 樹を揺らす。
樹は垂直だからな。タテに伸びるからな。
ヨコのない、ヨコを欠いた世界で、
誰が 生きたいのだろうか。
 
梅雨到来、
知りあいの、人妻の、ぼくと同い年の、
(だけど、旦那は6つも年上で。)
女性の個展を訪ねると
猫の版画
ばかりが 置いてあった。
江戸川乱歩の時代 そのままの
古びた銀座1丁目のビルヂングの一室ばかり の
間貸しのギャラリィで。
ぼくと人妻は ヨコシマな恋を するかわりに
初夏には ありがたい麦茶を ふるまわれながら
芸術の談義をした。(不健全で、健康なふたり。)
猫を 吸いこんでしまった シルク・スクリーン
孔の深さと そこの間断の濃密で 猫を活かす。
猫を好むのは 猫が勝手だから だと言う。
猫とはちがう ヒトのカタチの唇で。
 
 気が付けば
 ぼくのアレルゲンは 猫の毛なのであった。
 肩を落として、銀座を旅立つ。
 
小説家よ、
樹に欲情しないのなら、
樹を描くのは もう止しなさい。
樹を揺すぶっても 何も生まれないのだ。
 
 樹だけが 群生する
 奇妙で、奇異で、不便で、不毛なスクリーン。
 



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