12   はずかしい台詞
 
 
 
 
私は恥ずかしいセリフに忍耐する。
「私はあなたのはずかしい場所にKISSしよう、
 と思います。
 どうですか? はずかしいですか?」
私は恥ずかしいセリフに傷を与える。
「私はあなたに私の妻となってもらいたいのです。
 べつだん、私の夫でもかまいません。
 私の味噌汁を、毎あさ、作りなさい」
私は恥ずかしいセリフに感動する。
「恥の多い人生をおくってきました。
 生まれて、すみません」
私は恥ずかしいセリフで政権を強奪する。
「臣民・西郷隆盛は逆賊に非ず。
 ねえ、ここにKISSしても、いいでしょう?」
私は恥ずかしいセリフにためらわない。
「あなたは美人だ、
 私のSEXフレンドになりなさい」
私は恥ずかしいセリフに市民権を付与する。
「私は今日からあなたを差別します。
 理由などは、ありえません」
私は恥ずかしいセリフをキャリアと見做す。
「泣いてもいいですか?
 いま、あなたに離別されたばかりですから」
私は恥ずかしいセリフの塊として生きている。
「先生、注射を打ってください、
 浣腸もしてください」
私は恥ずかしいセリフを積極的に利用する。
「はい、自給は900円です」
黒い時計の秒針が狂ったように
ものすごい勢いで 回りだして
やがてそれは風速を帯びて
南方へ進軍する。
時計に襲来された現地のにんげんは
時計を『聖台風』と呼びならわした。
恥知らずな土人どもである。
 



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