ああ これは
まるで 黙示録のような風景だ
と 美しく錯覚し 思って
思い込んで 想い悩み 抒情の 近い現在形から 沈み
センチメントな 憤怒の 遠い過去形で 浮かびあがり
思い直す。
風景は
いつだって 黙って 示してきたからだ。
（過去形のさけびを、いつまで無視するの？、ね？、・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ）
（叫びは、視覚の領分ではない、と警部補は、断言した。）
（警察の仕事は、現場写真を、遺族へ示すこと、・ ・ ・ ・ ・ ）
（近い色情は、遠い血族よりも、意味がない。）
うつくしいのは 記憶のあやまりではなく
風景の正確さ。
この風景を
写真に 撮ろうと想います。
しかし それは
無益な 衝動。
死を知っている 人間だけが
風景を 写真に残そうと
するのです、まちがいようもなく。
ポートレートは
死の瞬間を 切断された紙片。
風景写真は
あまりに 永遠の匂いが強すぎて
死の訴えを 官能させる紙片です。
犬は勁い。
犬は 風景の一部と 成れるから。
人間は ちがいます。
人間の影が 少しでも入ると
それは もう風景写真ではない。
犬も死ぬ。ヒトも死ぬ。
しかし 死の分別ある哀しみが
人間を 風景から 限りなく遠ざけます。
私は 今日という一日を
この公園で このベンチで
移ろう 巨きな風景を観て 過ごしました。
カメラを もってきていましたが
一枚も 撮れませんでした。
畏敬の味の 雲がながれて
泣きそうな 夕暮れです。
これから 急いで 帰って
忘れそうだった 恋人の裸身を撮ろうと 誓います。
むつびあおうと おもいます。
（乾版ノヨウニ アマリニ平明ニ カタリスギタ残酷ナ忸怩ノ沼ニ 踝マデ浸ッテ、）
（鎌鼬ノ、カメラ、シャッターノ切る音ヲ、立テテ、）
（最後ノ一行ヲ配置スル。）
（窓）
死の 追憶の写真です。
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